千里市民フォーラム › まちづくり市民フォーラム 泉英明さんによるキースピーチ「どうしたら公共空間がおもしろくなるか」
2016年03月30日
泉英明さんによるキースピーチ「どうしたら公共空間がおもしろくなるか」
第14回千里ニュータウンまちづくり市民フォーラム
「考えよう!千里の公園のおもしろい使い方」のキースピーチ
『どうしたら公共空間がおもしろくなるか』
(ハートビートプラン代表 泉 英明さん)
日時:2016年(平成28年)2月20日(土)
会場:千里中央コラボ3階 第1講座室
の詳細記録です。
大阪の水辺空間をビックリするぐらい変えてしまった泉さんの話の中には、千里ニュータウンだけでなく、いろいろな街にある道路・河川・公園などの公共空間をおもしろくする楽しいアイデア、普通の人々をどう巻きこむか、行政とどう二人三脚するか、揉め事にどう備えるかなど、実践的な考えや手法が満載です。どうぞじっくりお読みください!
■パブリックライフとパブリックスペース
今日は、公共空間をどのようにみんなで面白くしていくか、川を中心にご紹介します。みなさんがいろんな街に行かれた時に、「この街いいな」という都市の魅力には、まちなみや美しい都市の物理的空間とともに、そこでどんな人がどういう活動をしているのかという”アクティビティ”、特に”つくる”と”つかう”の観点が非常に大切だと思っています。
これは中之島公園です。人の活動がこれだけ多様にされていることが都市の空間の魅力をアップさせている。人がいなかったら淋しい空間だと思います。どういう人がどんな使い方をしてくれるのかを作り込んでいくことが都市の魅力にとって大切だと思っています。
最近、使われない空間が増えています。人口が減ったり、都市が小さくなっていくことで、お金があっても管理できない空間がどんどん増えてくる。そういう空間をどのような活動とか人々が使っているかということを作り込んでいくことが必要です。プライベートな空間もそうですし、公共の空間もそうです。いろんな空間が余ってくるところをどのようにいろんな人に開いていくのかを考えていくことが大切です。みなさんが取り組んできていることが題材になっていると思います。
都市の魅力の究極は”出会いの化学反応”。海外ではパブリックライフと言われています。
公共空間で他者と直接的、間接的に関わりながら過ごす社会的生活のことです。個人の家に閉じこもるのではなくて、今日の場のように多様な価値観の人たちと新しいものを生んでいくものが公共空間で特に求められています。
いろんな人と関わり合っていける暮らし(パブリックライフ)が行われる空間をどのようにスペースとして作っていくかということが大切で、まさに公園とか川がパブリックスペースの代表的なところです。どのように使われていないところを使っていくか。いろんな人が使いたいということで出てくる苦情や問題をどう調整していくかで生活の質が上がってくる。相互関係にあるんじゃないかと思います。
これは渋谷です。人が多く物理的には交わっていますが、実際には出会ったり化学反応が起きているかというと起きていない。人がたくさん来ればいいものでもない。人と人が思いだったり、きちっと出会ったりできる空間、しつらえが大切です。
自分の居場所になるような公共空間がある街は化学反応が促進されるんじゃないか。新しいビジネスを始めようとする人がいろんな人からの目線にさらされるようなマーケットがあってチャレンジができるところとか。こういうプラットフォームがあって繋がれるとか、世代間の継承があるようなイベントだったりお祭りだったり、そんな関係性が大切で、住みやすい街はこういうものを持っているところだと思います。日本や世界でよく言われる“車から人へ”とか“作るから使う”、“街に愛着を持つこと”が化学反応を促進する方法論としてあげられています。
■大阪で関わってきた水辺の取り組み
≪水の都・大阪≫
大阪は都市部が川で一周できるんですね。上が中之島の中州、下が道頓堀、右側が大阪城、東にある南北の川が地図には載らない川といわれる東横堀川。上に高速道路が通っています。西側は木津川。中央卸売市場をまっすぐ行くとUSJがあります。
江戸時代には堀がたくさん掘られていた。大正時代の末期にもほとんど残っていた。赤い部分は路面電車。昔はかっこいい町中だった。今も残っている中央公会堂、中之島図書館、建て替えられる前の大阪市役所。
工業用水に地下水をくみ上げて使うことで地盤が下がって、台風が来ると浸水してしまったり水が汚れてきたので、堀をどんどん埋め立てたり、堤防を高くしたり、川辺にはブルーテント。川の上に高速道路が作られたりして、水辺が完全に遠ざかってしまった。2008年頃まではこんな状況でした。中之島の中心部には、ほとんどブルーテントが並んでいました。遊歩道が出来る前の道頓堀は商店街からは見えなかった。橋から見ると噴水が上がっていますが、見てもらうものじゃなく、臭いので曝気して酸素を入れるためのものです。中央市場の前には大きな空き地がありました。
2001年から大阪府と大阪市が天満橋の旧松坂屋(現シティモール)横の誰も行かなかったところを「川の駅」にしたり、道頓堀に遊歩道を整備したり、貯木場だったところをリバープレイスにするなど、目立つシンボリックなところのハードを変え始めました。
≪都市大阪創生研究会≫
市民サイドも実はけっこういろんな活動をしていました。千里ニュータウンのみなさんも町中で様々な活動をしていると思いますが、大阪市内でもいろんな活動をしているメンバーがいます。これは私が関わった「都市大阪創生研究会」(座長:鳴海邦碩)です。大阪の企業のいろんな人が集まって、全部で30人ほどいました。その中の若手の7人でつくる大阪の水辺を面白くできないかというチームに私も所属していました。普段は入れない水辺を歩いて、とことんアイデア(どんな状況になれば面白いか)をみんなで妄想して列記しました。たとえば、水の上にカフェがったらいいんじゃないかとか、川から舟で直接
入れるマンションがあればいいんじゃないかとか。堤防にテラスを作って、京都の鴨川納涼床のようにアレンジしたらどうかなどです。実際にどういうことができるのかを調べると、実はいろいろ提言されていた。各団体がこうあるべきというものを出していたけど、何もなされていないことが分かりました。それだったら自分たちでやってみようと、2003年からそれぞれ仕事をしながら打ち合わせをして、準備を始めました。
≪水上カフェ≫
まず「川にカフェを張り出す」ということを始めました。カフェをしたことがないし、川に張り出せる河川法もあまり知らなかった。舟をどこで借りられるかも分からなかった。いろんな方に聞いて、合法的に自分たちでやりました。エンジンの付いていない台船を作って川に浮かべてカフェ空間にして、陸側に調理場を作ってお客さんに来ていただきました。最初は大正区の京セラドーム前でしたが、最初は「あんな臭いところにお客さん来てくれないんじゃないの」と言われていましたが、始めるとどんどん来てくださった。相当気持ちいいし、夕日が綺麗なんですね。秋で季候も良かったので、ミュージシャンを呼んでライブをしました。開催するのに300万円以上かかりましたが、自分たちでビール売ったり、ご飯を作ったりして、二週間ほどで300数十万を売り上げて赤字が無くなりました。
良かったなと思うのは提案書という書面を出す方法もあるのですが、書面ではなくて実際にやってみせてしまってこんな楽しい使い方があるんだ。公共空間も今までほとんど何も使われてなく寂しいところがこういう装置を持ってくるだけで人が使える場所、使っていい場所だと思えるようになる。実際に体験しないと伝わりにくいのだなということが分かった。このようなことが大切なのだと思いました。
≪大川の花見、水辺カフェ≫
陸でブルーシートを敷いて花見をしていたんですが、大川は両岸に桜がある。見たい。じゃあ水に出てしまおうと。ボーイスカウトの人に縛ってもらって。縛り方が悪くてだんだん沈んできて女性陣が怒っていましたが(笑)。週1回第3水曜日に、みんなで中之島に集まってランチを食べる「水辺ランチ」をやっているNPOがあり、それだけの活動でも水辺に親しむ人が多くなった。
≪ご来光カフェ≫
これは我々のNPOがやっている「ご来光カフェ」です。大阪市役所前の水上バス乗り場から東を見ると、ここだけ唯一東西に開けた水辺空間がある。ここから東の生駒山から朝日が昇るのは、10月の8日しか見えない。それを発見して嬉しくなったのですが、朝5時半にオープンし、7時半に閉店するカフェを開催して、去年で10回目でした。
≪クリエイティブセンター大阪(名村造船跡地)≫
有名な住之江区の名村造船のドックです。造船所が移転後も残ったドックをオーナーの芝川さんがアーティストに30年間貸し出して、アーティストがアートの拠点にしようと面白い活動を行っています。
≪サンセット2117≫
大正区にある「サンセット2117」は、浮いているフローティングバーで、2階がライブハウスになっています。神戸の方から船で来て停めて、音楽やお酒を楽しめることを面白いおじさんがゲリラ的にやっています。
≪北浜テラス≫
そういう面白い人たちに刺激されて、北浜の高い堤防に囲まれたところにテラスを張ってなにか出来ないか。大阪中すべての水辺を歩いた結果、ここがいちばん可能性があると結論づけて、ここをなんとかしようと考えました。川に向いて段ボールが積み上がって、完全に川に閉じられて、死んでいる空間でした。
川沿いの1階に床を張れば、道路から店の中を抜けたら川に面したテラスになる。そして川から舟で出入りできないかな、もともと舟で出入りしていたのだし・・と。ただ河川敷は公共空間であって、民地じゃないので使えない。そこを使えないかと、NPOのメンバーで企画書を書いて、行政と話をしました。
淀屋橋の大阪市役所前から大林組の本店があったところまで、50くらいのビルがあります。そのオーナー達を登記簿で調べて、「こんなことしませんか?」と個別に提案しにいったら面白いオーナー(蕎麦屋)に出会いました。7月25日の天神祭にはドンドコ舟とかが前を通って賑やかになるビルです。天神祭の一週間前になると、毎年室外機が壊れるので、直すための台を2週間ほどおかせてくれと、行政に占用許可を取りに行く。なぜか天神祭の前になると室外機が壊れるのですが(笑)、酒を振る舞ったり、大阪締めなどをして楽しんでいるオヤジがいると分かりました。
それだけでなく、隣の料亭もテラスを出したいと思っていたが、河川の公共空間だからダメだと言われて諦めていた。実はオーナーやテナントにもやりたいと考えている人たちがいたんです。そんな彼らと意気投合して、50のビルのうち3つのオーナーさんとやろうということになりました。まずは試しに一ヶ月だけやらせてくださいとお願いをして、すぐ壊せるように簡単な工事で安く済ませた。すると一ヶ月の予約が一週間程度で埋まるくらいの人気になり、メディアでも取り上げてもらった。それで、やっぱりこれを常設化しようということになりました。
一ヶ月お試しで公共空間を使うことはいいが、基本的にはひとつのオーナーが勝手に使うことは許されない。公園もそうです。では、どのようにしたら公共空間を使えるのかを河川の管理者と話したところ、きちんと地元で責任を持って運営管理(デザインも含めて)してくれるのであれば、「水都大阪」という目標もあるので、管理者である大阪府として認めていきましょうと言ってもらいました。そこで地元のオーナー、テナントとNPOが入ったまちづくり協議会を作りました。その協議会が河川の公共空間を責任もって管理します。なにか事故があっても全部責任を負いますと。そしてデザインのルールや運営の仕組みを作って、2009年(平成21年)から始めました。現在も常設であります。舟でも入れるように、船着場も社会実験で試しました。利用者は、最初は2~3万人でしたが、平成26年は8万人(テラス部分のみ)でした。テラスを出すのは最初3店舗でしたが、今は12店舗に増えましたし、テラスがなくてもおしゃれな店が出てきています。
“自由と責任のマインド”をもって自分たちで公共空間を運営する身近な例では、公園を市民で管理運営する「パークマネジメント」があります。北浜テラスでは、河川の空間を地元の組織できちんと責任をもってマネジメントしています。具体的には新しくテラスを出したいという人に、「このようにすれば出せますよ」「デザインをみんなで守りましょう」「公共空間を使わせていただいているので還元をしましょう」、「このようなプロモーションをしていこう」など、月1回の理事会などを頻繁に開いて話し合っています。
≪水都大阪≫
「水都大阪」は、河川空間のハード整備をしている行政とゲリラ的にイベントなどをやっていた民間が協働して、2009年に52日間の大イベントとして始まりました。良かったのは、イベント会社に投げずに、民間と行政が手弁当で全部作って運営できたことです。
個々のイベントは、「こういうことをやりたい」というアイデアを市民から公募しました。ある女の子は「中之島公園の大きなクスノキにブランコを作って遊ばせたい」という提案でした。公園管理者はそんなのアカンとなるので、どうすればいいかを考えて、ブランコのようなものを作ってクスノキの下に置きました。「千杯のコーヒーをいろんな人に届けたい」「野外音楽祭」「野外映画祭」「書道をしてヒラヒラしたい」「夜のキャンドルをしたい」など、いろんなやりたいことがそれぞれにある。それを公共空間である公園でやっていこうと。特にしたいことがない人には、「私はこのチームを応援したい」とボランティアスタッフとして運営していただきました。最終的にはこんなにたくさんの団体全体で自分たちの街のど真ん中にある中之島公園を使いこなそうとやっていきました。
毎年やっているとイベントが日常化してきます。サップという立ち漕ぎボードをイベントでやっていましたが、今は事業になりました。ヨガの人も川沿いに事務所を借りて事業としてされている。最初はイベントでこんなことが出来ないかとやっていた方にお客さんがついて、事業化していくんですね。
大阪の街は舟で一周できる。7~8人乗りの小さな船から大きな船まで色々あり、船着場も天満橋・北浜・淀屋橋・東横堀・福島・中之島・大正がある。これらの船着場周辺の飲食店を舟でゆらゆらはしごしながら楽しむのが「大阪水辺バル」です。
≪水都大阪パートナーズ≫
2013年から「水都大阪パートナーズ」という推進主体が公募されました。これは大阪市役所前の川沿いの公園です。昨年は大阪市の公園課から5ヶ月借用して、カフェを運営しました。利用者に利用料を払っていただいて、我々は利用料の余剰分を市民活動に還元していくことをしました。中之島公園でイベントがあったのではなく、クラフトビールの店が出来ただけですが、これだけの人が集まってウダウダできる空間になりました。
≪中之島GATE≫
USJの手前の中央卸売市場の南の安治川沿いに、見捨てられたようなエリアがありました。堂島川、土佐堀川、木津川などの川がぶつかるシンボリックなところです。明治時代に開港したときに安治川がメインの川だったので、海外の船がここまで入ってきて泊まるところでした。この島が全部居留地でしたが、今は見る影もない倉庫街です。居留地の隣の一番の街区だったのですが、いま空いているので現代風の街区を作ろう、都心部と海を繋ぐGATEにしようと始めました。ここは中之島と違って、誰も来るところじゃなく、誰も知らないので、知ってもらうためのイベントを2012年、2013年にやりました。これをしたところ、興味を持っていただいた面白い事業者さんが「中之島漁港」という、全国から生きた魚を運んできて生けすに泳がせて、買ったり食べたりする常設の事業を始め、昨日で1年になります。
我々は、空き地や公園などを日常的に人が使いやすくするとか、使えるようにするために、我々自身がイベントをするのではなく、いろんな人が使えるように、事業者も入って飲食機能があることでみなさんが来やすくなる、そういうことを仕掛けています。
≪新たな拠点づくりの検討≫
OBPの前の「大阪城ハーバー」(大阪城公園の北にある大阪城港から観光船を発着させる社会実験)、大阪市役所の対面にある「中之島LOVE CENTRAL」(堂島川や中央公会堂に面した飲食・ウエディング・クルージングの拠点施設)、京セラドームの前の「大正三軒家」、「天保山」など、事業者や区役所の人と一緒に次の拠点をどうやって作っていこうかと話しています。
≪シャレットワークショップ≫
シャレットワークショップは、全国から30人ぐらいの学生が毎年、どこかの街に行って一週間くらい滞在し、現場を見てどうなったらいいか話し合って、模型と提案を作るという建築学会の教育プログラムです。我々も学生たちと一緒に考えて、そのアイデアを実現したいと思っています。
≪ミズベリング世界会議≫
昨年の10月、サンアントニオ(アメリカ)、パリ、バンコクなどの世界の水辺の街から、水辺の話をしましょうと関係者が大阪に集まりました。そして、海外の旅行雑誌に「水都大阪」を載せていただきました。
■公共空間をおもしろくするために
≪価値の共有≫
公共空間を使いこなすには、「なぜ使うのか」という価値が共有できていないとなかなか進みません。公共空間を使うことによって人が来るのはもちろんそうですが、新しいスモールビジネスが生まれたり、そこに人がいて新しい交流が生まれる、投資が生まれるなど、どういうところを目指すのかを「行政」と「使う人」が共有することが大切だと思います。
水都大阪の場合は、停滞している大阪に新しい都市のブランドを作る、そのために水辺を使うことが、大阪府・大阪市と経済界との間で最初に決められていたので動きやすかった。そして、行政はできるだけ権限を民間に委ね、運営管理する主体を作って活動や投資を呼び込むことをやりました。我々の「水都パートナーズ」は、水都大阪を運営する主体として、4年間の時限でやっています。あと1年で任期が終わるので、次の4年間は新しい人が選ばれてやることになっています。
≪姫路駅前広場≫
姫路が今、ブレイクしています。姫路城の改修が終わって、国内外から人が押し寄せています。姫路の駅前は、昔ロータリーがあって車で占められていましたが、今は地下にサンクンガーデンがあって、正面に姫路城が見えるという素晴らしい歩行者空間になっています。この空間全体を姫路市が持っていますが、プロポーザルによってNPOが管理しています。ミュージシャンが使いたいとか、マーケットをやりたいとか、使用料も決めて、実際に動かしてチャレンジしています。
もともと市の案があったのですが、市民や商店街が対案を示しました。市も対案のほうが良いとなって、基本プランを変更して官民で進めました。姫路駅前広場活用協議会を作って、NPOが全体をまとめています。協議会には、専門家、大学関係者、行政、商工会議所などが入り、年間200日くらい稼働しています。企業のプロモーションに使ったり、「御結び市」などの定例のマーケットもあります。人のネットワークづくりもやっています。
なぜこういうことが出来ているかというと、水都大阪や北浜テラスと似ていますが、運営をしている人がいます。水都大阪や北浜テラスのように、行政が直営でやっているところもありますが、民間サイドがそこから受けて全体の運営を担っているのです。「わたし使いたい」「これが良い」「これが悪い」を決めるのはなかなか難しい、調整が難しいと公園管理者によく言われます。だから、それらを民間に任せて民間サイドで調整してもらって、公平というよりも「楽しい活動」や「場に馴染む活動」を積極的に誘致していく。その意味で民間が運営することは良いので、徐々に広まっています。
≪ブライアント・パーク≫
これは有名なニューヨークのブライアント・パークです。イベントがあって賑わっているのではなく、普通の昼間でこんな感じです。ここがすごいのは、ブライアント・パークを管理している会社があって、ホームページを見ると、「今日こういうイベントがあります」ということが書いてあるんです。たとえば定例何曜日にヨガがありますとか、子どもの読み聞かせがいつありますとか。大きな商業イベントも時々開かれますが、普段はありません。面白いのは、移動可能な椅子がたくさん並べられている。ベンチが設置されている公園はよくありますが、何人で行っても椅子を移動して自由に座れる。ポジショニングを自分たちで出来る。好きな場所に行って、そこが居場所になる。日本でやると、盗まれるんちゃうか、壊されるんちゃうかとなりますが、ここでは一切盗まれていない。ジャグリング教室、バードウォッチングなど、子どもから大人までいろいろなプログラムがある。趣味を持つ市民の専門家が教えますというのもあります。こういうことが日常的に行なわれていて、管理会社がまとめて毎週プログラムを出しています。
≪これからの都市空間の作り方≫
今までは、誰かが作ってくれたところを使うということでした。これからは、行政やディベロッパー(開発事業者)などの「作り手」が作ってきた時代から、「使い手」「使う側」がどのような街にしたいかと作っていく時代になってくる。むかし開発主義、お金主義といわれたように、お金がついていて作っていける時代じゃなくなってきたので、自分たちで逆に作れる機会が増えていると思います。具体的に身近なエリアや施設の運営主体、たとえばマンションの管理組合やマンションのオーナーさんの集まり。商業施設のデベロッパーもオーナーですね。商店街振興組合は店舗、商売のスポンサーの集まり。町内会は住民の集まり。まちづくり協議会はいろんな主体が集まっている。サークル団体は利用者やサポーターの集まりと考えると、それらが近くの空間に責任を持って管理していって、自分たちにも使いやすく、他の人にもオープンに使ってもらえるようなものになると、非常に面白くなってくるんじゃないかな。今は空いているところは、行政の施設だったら行政が管理し、商業施設の広場だったら企業が管理していることになっている。これからは「使い手が管理する」ということがありえるんじゃないかというのが先ほどご紹介した事例だと思います。
≪パブリックライフに適した公園≫
公共には「オフィシャル」「コモン」「オープン」の3つの意味があると言われています。公共空間も3つに分類できます。「オフィシャル」は行政が持っているもの。「コモン」は共有のもの、すべての人に関係する共有物。「オープン」は誰に対しても開かれているもの。
プライベート(私側)←→パブリック(官側)で分類すると、道路、公園、河川は行政が持っているものですが、路地、私道はプライベート。公開空地もオーナーやデベロッパーが持っていたり、どっちでもないところもあります。そういうプライベートとパブリック、スケールでいうと点~線~面になります。
真中に「広場」とあるのは、姫路の駅前などをイメージしています。道路でも公園でも河川でもないところでオープンな雰囲気があり、誰でも入れる。道路や河川はオープンですが、道路は車が通行できるようにしなければいけない。河川は自然そのものなので水を流さないといけない。これらは道路交通法や河川法、治水で縛りがあるんですが、公園は縛られていないという強みがあります。公園とか広場が都市の中で一番オープンな空間になっている。パブリックライフを実現できる一番適した、最もオープンな場所のひとつです。
≪揉め事を承知の上で公園を利用する≫
ただ、ボールはダメ、音楽をやりたい人はたくさんいるがうるさいからダメ。犬の散歩も嫌いな人がいる。バーベキューも火を使っちゃダメ。ホームレスも入ってきてほしくない。けどホームレスを支援したいNPOもいる。もっともオープンな空間であるがゆえに、それぞれ自分がしたいことができると思って来ると、他人に嫌がられるということが出てくる。だから公園管理者は大変です。公園管理者は身近な市民の利害調整で疲れてしまっているので、道路管理者や河川管理者よりも「余計なことはしないでくれ」となる。その気持ちはよく分かります。私も水都大阪パートナーズという立場で中之島公園を借りたり、中之島GATEの空間を借り受けたりしたときに揉め事がたくさんあって、全部こっちにかかってきます。音楽をやってほしいと思って音楽をやってもらうと、周辺のマンションから「おまえ訴えるぞ」と怒られるし、いろいろありました。
そういうことが絶対出てくることを承知の上で、あえて使っていくことをしてはどうだろうか。日常のこういう使い方が出来るんじゃないかと、いろんな使い方・利用シーンがある。それを妄想してみて、小さく主体と活動をイメージして提案する。私たちはこういう使い方をしたいが、これは最低限いろんな人に対しての迷惑をかけないことを考えて、もっと良い効果がありますよと管理者と作戦会議をする。そういうことをやってみて、世間の評価を得て、これは結構良いんじゃないかとなれば実際に使えてくる。
≪プレーヤーから調整者へ≫
もうひとつ大切なのは、自由と責任のプレーヤーになるだけではないこと。ここで終わると調整者は行政のままです。市民がプレーヤーから調整者に移っていけば、市民サイドで調整すればいいということになる。市民は行政には文句を言いやすいが、市民同士だと言い方も変わってきます。きちんと話す機会を持てば調整がよりやりやすくなり、可能性が増える。こういうことをやりたいというチャレンジやアイデアを実現できることが増えてくると、パブリックライフに近づくんじゃないかといつも思って生活しています。
どうやれば公共空間が面白くなるかについて話してきました。水都大阪や全国と海外の事例も見つつ、このあたりが最終的に出来てきたらいいんじゃないかと思います。ありがとうございました。
●pdf版もあります。こちらからダウンロードください。
●第2部:ワークショップ「考えよう!千里の公園のおもしろい使い方」は以下のリンク先にてご参照ください。
●3月サロンで、大フォーラムをふり返りました。
「考えよう!千里の公園のおもしろい使い方」のキースピーチ
『どうしたら公共空間がおもしろくなるか』
(ハートビートプラン代表 泉 英明さん)
日時:2016年(平成28年)2月20日(土)
会場:千里中央コラボ3階 第1講座室
の詳細記録です。
大阪の水辺空間をビックリするぐらい変えてしまった泉さんの話の中には、千里ニュータウンだけでなく、いろいろな街にある道路・河川・公園などの公共空間をおもしろくする楽しいアイデア、普通の人々をどう巻きこむか、行政とどう二人三脚するか、揉め事にどう備えるかなど、実践的な考えや手法が満載です。どうぞじっくりお読みください!
■パブリックライフとパブリックスペース
今日は、公共空間をどのようにみんなで面白くしていくか、川を中心にご紹介します。みなさんがいろんな街に行かれた時に、「この街いいな」という都市の魅力には、まちなみや美しい都市の物理的空間とともに、そこでどんな人がどういう活動をしているのかという”アクティビティ”、特に”つくる”と”つかう”の観点が非常に大切だと思っています。
これは中之島公園です。人の活動がこれだけ多様にされていることが都市の空間の魅力をアップさせている。人がいなかったら淋しい空間だと思います。どういう人がどんな使い方をしてくれるのかを作り込んでいくことが都市の魅力にとって大切だと思っています。
最近、使われない空間が増えています。人口が減ったり、都市が小さくなっていくことで、お金があっても管理できない空間がどんどん増えてくる。そういう空間をどのような活動とか人々が使っているかということを作り込んでいくことが必要です。プライベートな空間もそうですし、公共の空間もそうです。いろんな空間が余ってくるところをどのようにいろんな人に開いていくのかを考えていくことが大切です。みなさんが取り組んできていることが題材になっていると思います。
都市の魅力の究極は”出会いの化学反応”。海外ではパブリックライフと言われています。
公共空間で他者と直接的、間接的に関わりながら過ごす社会的生活のことです。個人の家に閉じこもるのではなくて、今日の場のように多様な価値観の人たちと新しいものを生んでいくものが公共空間で特に求められています。
いろんな人と関わり合っていける暮らし(パブリックライフ)が行われる空間をどのようにスペースとして作っていくかということが大切で、まさに公園とか川がパブリックスペースの代表的なところです。どのように使われていないところを使っていくか。いろんな人が使いたいということで出てくる苦情や問題をどう調整していくかで生活の質が上がってくる。相互関係にあるんじゃないかと思います。
これは渋谷です。人が多く物理的には交わっていますが、実際には出会ったり化学反応が起きているかというと起きていない。人がたくさん来ればいいものでもない。人と人が思いだったり、きちっと出会ったりできる空間、しつらえが大切です。
自分の居場所になるような公共空間がある街は化学反応が促進されるんじゃないか。新しいビジネスを始めようとする人がいろんな人からの目線にさらされるようなマーケットがあってチャレンジができるところとか。こういうプラットフォームがあって繋がれるとか、世代間の継承があるようなイベントだったりお祭りだったり、そんな関係性が大切で、住みやすい街はこういうものを持っているところだと思います。日本や世界でよく言われる“車から人へ”とか“作るから使う”、“街に愛着を持つこと”が化学反応を促進する方法論としてあげられています。
■大阪で関わってきた水辺の取り組み
≪水の都・大阪≫
大阪は都市部が川で一周できるんですね。上が中之島の中州、下が道頓堀、右側が大阪城、東にある南北の川が地図には載らない川といわれる東横堀川。上に高速道路が通っています。西側は木津川。中央卸売市場をまっすぐ行くとUSJがあります。
江戸時代には堀がたくさん掘られていた。大正時代の末期にもほとんど残っていた。赤い部分は路面電車。昔はかっこいい町中だった。今も残っている中央公会堂、中之島図書館、建て替えられる前の大阪市役所。
工業用水に地下水をくみ上げて使うことで地盤が下がって、台風が来ると浸水してしまったり水が汚れてきたので、堀をどんどん埋め立てたり、堤防を高くしたり、川辺にはブルーテント。川の上に高速道路が作られたりして、水辺が完全に遠ざかってしまった。2008年頃まではこんな状況でした。中之島の中心部には、ほとんどブルーテントが並んでいました。遊歩道が出来る前の道頓堀は商店街からは見えなかった。橋から見ると噴水が上がっていますが、見てもらうものじゃなく、臭いので曝気して酸素を入れるためのものです。中央市場の前には大きな空き地がありました。
2001年から大阪府と大阪市が天満橋の旧松坂屋(現シティモール)横の誰も行かなかったところを「川の駅」にしたり、道頓堀に遊歩道を整備したり、貯木場だったところをリバープレイスにするなど、目立つシンボリックなところのハードを変え始めました。
≪都市大阪創生研究会≫
市民サイドも実はけっこういろんな活動をしていました。千里ニュータウンのみなさんも町中で様々な活動をしていると思いますが、大阪市内でもいろんな活動をしているメンバーがいます。これは私が関わった「都市大阪創生研究会」(座長:鳴海邦碩)です。大阪の企業のいろんな人が集まって、全部で30人ほどいました。その中の若手の7人でつくる大阪の水辺を面白くできないかというチームに私も所属していました。普段は入れない水辺を歩いて、とことんアイデア(どんな状況になれば面白いか)をみんなで妄想して列記しました。たとえば、水の上にカフェがったらいいんじゃないかとか、川から舟で直接
入れるマンションがあればいいんじゃないかとか。堤防にテラスを作って、京都の鴨川納涼床のようにアレンジしたらどうかなどです。実際にどういうことができるのかを調べると、実はいろいろ提言されていた。各団体がこうあるべきというものを出していたけど、何もなされていないことが分かりました。それだったら自分たちでやってみようと、2003年からそれぞれ仕事をしながら打ち合わせをして、準備を始めました。
≪水上カフェ≫
まず「川にカフェを張り出す」ということを始めました。カフェをしたことがないし、川に張り出せる河川法もあまり知らなかった。舟をどこで借りられるかも分からなかった。いろんな方に聞いて、合法的に自分たちでやりました。エンジンの付いていない台船を作って川に浮かべてカフェ空間にして、陸側に調理場を作ってお客さんに来ていただきました。最初は大正区の京セラドーム前でしたが、最初は「あんな臭いところにお客さん来てくれないんじゃないの」と言われていましたが、始めるとどんどん来てくださった。相当気持ちいいし、夕日が綺麗なんですね。秋で季候も良かったので、ミュージシャンを呼んでライブをしました。開催するのに300万円以上かかりましたが、自分たちでビール売ったり、ご飯を作ったりして、二週間ほどで300数十万を売り上げて赤字が無くなりました。
良かったなと思うのは提案書という書面を出す方法もあるのですが、書面ではなくて実際にやってみせてしまってこんな楽しい使い方があるんだ。公共空間も今までほとんど何も使われてなく寂しいところがこういう装置を持ってくるだけで人が使える場所、使っていい場所だと思えるようになる。実際に体験しないと伝わりにくいのだなということが分かった。このようなことが大切なのだと思いました。
≪大川の花見、水辺カフェ≫
陸でブルーシートを敷いて花見をしていたんですが、大川は両岸に桜がある。見たい。じゃあ水に出てしまおうと。ボーイスカウトの人に縛ってもらって。縛り方が悪くてだんだん沈んできて女性陣が怒っていましたが(笑)。週1回第3水曜日に、みんなで中之島に集まってランチを食べる「水辺ランチ」をやっているNPOがあり、それだけの活動でも水辺に親しむ人が多くなった。
≪ご来光カフェ≫
これは我々のNPOがやっている「ご来光カフェ」です。大阪市役所前の水上バス乗り場から東を見ると、ここだけ唯一東西に開けた水辺空間がある。ここから東の生駒山から朝日が昇るのは、10月の8日しか見えない。それを発見して嬉しくなったのですが、朝5時半にオープンし、7時半に閉店するカフェを開催して、去年で10回目でした。
≪クリエイティブセンター大阪(名村造船跡地)≫
有名な住之江区の名村造船のドックです。造船所が移転後も残ったドックをオーナーの芝川さんがアーティストに30年間貸し出して、アーティストがアートの拠点にしようと面白い活動を行っています。
≪サンセット2117≫
大正区にある「サンセット2117」は、浮いているフローティングバーで、2階がライブハウスになっています。神戸の方から船で来て停めて、音楽やお酒を楽しめることを面白いおじさんがゲリラ的にやっています。
≪北浜テラス≫
そういう面白い人たちに刺激されて、北浜の高い堤防に囲まれたところにテラスを張ってなにか出来ないか。大阪中すべての水辺を歩いた結果、ここがいちばん可能性があると結論づけて、ここをなんとかしようと考えました。川に向いて段ボールが積み上がって、完全に川に閉じられて、死んでいる空間でした。
川沿いの1階に床を張れば、道路から店の中を抜けたら川に面したテラスになる。そして川から舟で出入りできないかな、もともと舟で出入りしていたのだし・・と。ただ河川敷は公共空間であって、民地じゃないので使えない。そこを使えないかと、NPOのメンバーで企画書を書いて、行政と話をしました。
淀屋橋の大阪市役所前から大林組の本店があったところまで、50くらいのビルがあります。そのオーナー達を登記簿で調べて、「こんなことしませんか?」と個別に提案しにいったら面白いオーナー(蕎麦屋)に出会いました。7月25日の天神祭にはドンドコ舟とかが前を通って賑やかになるビルです。天神祭の一週間前になると、毎年室外機が壊れるので、直すための台を2週間ほどおかせてくれと、行政に占用許可を取りに行く。なぜか天神祭の前になると室外機が壊れるのですが(笑)、酒を振る舞ったり、大阪締めなどをして楽しんでいるオヤジがいると分かりました。
それだけでなく、隣の料亭もテラスを出したいと思っていたが、河川の公共空間だからダメだと言われて諦めていた。実はオーナーやテナントにもやりたいと考えている人たちがいたんです。そんな彼らと意気投合して、50のビルのうち3つのオーナーさんとやろうということになりました。まずは試しに一ヶ月だけやらせてくださいとお願いをして、すぐ壊せるように簡単な工事で安く済ませた。すると一ヶ月の予約が一週間程度で埋まるくらいの人気になり、メディアでも取り上げてもらった。それで、やっぱりこれを常設化しようということになりました。
一ヶ月お試しで公共空間を使うことはいいが、基本的にはひとつのオーナーが勝手に使うことは許されない。公園もそうです。では、どのようにしたら公共空間を使えるのかを河川の管理者と話したところ、きちんと地元で責任を持って運営管理(デザインも含めて)してくれるのであれば、「水都大阪」という目標もあるので、管理者である大阪府として認めていきましょうと言ってもらいました。そこで地元のオーナー、テナントとNPOが入ったまちづくり協議会を作りました。その協議会が河川の公共空間を責任もって管理します。なにか事故があっても全部責任を負いますと。そしてデザインのルールや運営の仕組みを作って、2009年(平成21年)から始めました。現在も常設であります。舟でも入れるように、船着場も社会実験で試しました。利用者は、最初は2~3万人でしたが、平成26年は8万人(テラス部分のみ)でした。テラスを出すのは最初3店舗でしたが、今は12店舗に増えましたし、テラスがなくてもおしゃれな店が出てきています。
“自由と責任のマインド”をもって自分たちで公共空間を運営する身近な例では、公園を市民で管理運営する「パークマネジメント」があります。北浜テラスでは、河川の空間を地元の組織できちんと責任をもってマネジメントしています。具体的には新しくテラスを出したいという人に、「このようにすれば出せますよ」「デザインをみんなで守りましょう」「公共空間を使わせていただいているので還元をしましょう」、「このようなプロモーションをしていこう」など、月1回の理事会などを頻繁に開いて話し合っています。
≪水都大阪≫
「水都大阪」は、河川空間のハード整備をしている行政とゲリラ的にイベントなどをやっていた民間が協働して、2009年に52日間の大イベントとして始まりました。良かったのは、イベント会社に投げずに、民間と行政が手弁当で全部作って運営できたことです。
個々のイベントは、「こういうことをやりたい」というアイデアを市民から公募しました。ある女の子は「中之島公園の大きなクスノキにブランコを作って遊ばせたい」という提案でした。公園管理者はそんなのアカンとなるので、どうすればいいかを考えて、ブランコのようなものを作ってクスノキの下に置きました。「千杯のコーヒーをいろんな人に届けたい」「野外音楽祭」「野外映画祭」「書道をしてヒラヒラしたい」「夜のキャンドルをしたい」など、いろんなやりたいことがそれぞれにある。それを公共空間である公園でやっていこうと。特にしたいことがない人には、「私はこのチームを応援したい」とボランティアスタッフとして運営していただきました。最終的にはこんなにたくさんの団体全体で自分たちの街のど真ん中にある中之島公園を使いこなそうとやっていきました。
毎年やっているとイベントが日常化してきます。サップという立ち漕ぎボードをイベントでやっていましたが、今は事業になりました。ヨガの人も川沿いに事務所を借りて事業としてされている。最初はイベントでこんなことが出来ないかとやっていた方にお客さんがついて、事業化していくんですね。
大阪の街は舟で一周できる。7~8人乗りの小さな船から大きな船まで色々あり、船着場も天満橋・北浜・淀屋橋・東横堀・福島・中之島・大正がある。これらの船着場周辺の飲食店を舟でゆらゆらはしごしながら楽しむのが「大阪水辺バル」です。
≪水都大阪パートナーズ≫
2013年から「水都大阪パートナーズ」という推進主体が公募されました。これは大阪市役所前の川沿いの公園です。昨年は大阪市の公園課から5ヶ月借用して、カフェを運営しました。利用者に利用料を払っていただいて、我々は利用料の余剰分を市民活動に還元していくことをしました。中之島公園でイベントがあったのではなく、クラフトビールの店が出来ただけですが、これだけの人が集まってウダウダできる空間になりました。
≪中之島GATE≫
USJの手前の中央卸売市場の南の安治川沿いに、見捨てられたようなエリアがありました。堂島川、土佐堀川、木津川などの川がぶつかるシンボリックなところです。明治時代に開港したときに安治川がメインの川だったので、海外の船がここまで入ってきて泊まるところでした。この島が全部居留地でしたが、今は見る影もない倉庫街です。居留地の隣の一番の街区だったのですが、いま空いているので現代風の街区を作ろう、都心部と海を繋ぐGATEにしようと始めました。ここは中之島と違って、誰も来るところじゃなく、誰も知らないので、知ってもらうためのイベントを2012年、2013年にやりました。これをしたところ、興味を持っていただいた面白い事業者さんが「中之島漁港」という、全国から生きた魚を運んできて生けすに泳がせて、買ったり食べたりする常設の事業を始め、昨日で1年になります。
我々は、空き地や公園などを日常的に人が使いやすくするとか、使えるようにするために、我々自身がイベントをするのではなく、いろんな人が使えるように、事業者も入って飲食機能があることでみなさんが来やすくなる、そういうことを仕掛けています。
≪新たな拠点づくりの検討≫
OBPの前の「大阪城ハーバー」(大阪城公園の北にある大阪城港から観光船を発着させる社会実験)、大阪市役所の対面にある「中之島LOVE CENTRAL」(堂島川や中央公会堂に面した飲食・ウエディング・クルージングの拠点施設)、京セラドームの前の「大正三軒家」、「天保山」など、事業者や区役所の人と一緒に次の拠点をどうやって作っていこうかと話しています。
≪シャレットワークショップ≫
シャレットワークショップは、全国から30人ぐらいの学生が毎年、どこかの街に行って一週間くらい滞在し、現場を見てどうなったらいいか話し合って、模型と提案を作るという建築学会の教育プログラムです。我々も学生たちと一緒に考えて、そのアイデアを実現したいと思っています。
≪ミズベリング世界会議≫
昨年の10月、サンアントニオ(アメリカ)、パリ、バンコクなどの世界の水辺の街から、水辺の話をしましょうと関係者が大阪に集まりました。そして、海外の旅行雑誌に「水都大阪」を載せていただきました。
■公共空間をおもしろくするために
≪価値の共有≫
公共空間を使いこなすには、「なぜ使うのか」という価値が共有できていないとなかなか進みません。公共空間を使うことによって人が来るのはもちろんそうですが、新しいスモールビジネスが生まれたり、そこに人がいて新しい交流が生まれる、投資が生まれるなど、どういうところを目指すのかを「行政」と「使う人」が共有することが大切だと思います。
水都大阪の場合は、停滞している大阪に新しい都市のブランドを作る、そのために水辺を使うことが、大阪府・大阪市と経済界との間で最初に決められていたので動きやすかった。そして、行政はできるだけ権限を民間に委ね、運営管理する主体を作って活動や投資を呼び込むことをやりました。我々の「水都パートナーズ」は、水都大阪を運営する主体として、4年間の時限でやっています。あと1年で任期が終わるので、次の4年間は新しい人が選ばれてやることになっています。
≪姫路駅前広場≫
姫路が今、ブレイクしています。姫路城の改修が終わって、国内外から人が押し寄せています。姫路の駅前は、昔ロータリーがあって車で占められていましたが、今は地下にサンクンガーデンがあって、正面に姫路城が見えるという素晴らしい歩行者空間になっています。この空間全体を姫路市が持っていますが、プロポーザルによってNPOが管理しています。ミュージシャンが使いたいとか、マーケットをやりたいとか、使用料も決めて、実際に動かしてチャレンジしています。
もともと市の案があったのですが、市民や商店街が対案を示しました。市も対案のほうが良いとなって、基本プランを変更して官民で進めました。姫路駅前広場活用協議会を作って、NPOが全体をまとめています。協議会には、専門家、大学関係者、行政、商工会議所などが入り、年間200日くらい稼働しています。企業のプロモーションに使ったり、「御結び市」などの定例のマーケットもあります。人のネットワークづくりもやっています。
なぜこういうことが出来ているかというと、水都大阪や北浜テラスと似ていますが、運営をしている人がいます。水都大阪や北浜テラスのように、行政が直営でやっているところもありますが、民間サイドがそこから受けて全体の運営を担っているのです。「わたし使いたい」「これが良い」「これが悪い」を決めるのはなかなか難しい、調整が難しいと公園管理者によく言われます。だから、それらを民間に任せて民間サイドで調整してもらって、公平というよりも「楽しい活動」や「場に馴染む活動」を積極的に誘致していく。その意味で民間が運営することは良いので、徐々に広まっています。
≪ブライアント・パーク≫
これは有名なニューヨークのブライアント・パークです。イベントがあって賑わっているのではなく、普通の昼間でこんな感じです。ここがすごいのは、ブライアント・パークを管理している会社があって、ホームページを見ると、「今日こういうイベントがあります」ということが書いてあるんです。たとえば定例何曜日にヨガがありますとか、子どもの読み聞かせがいつありますとか。大きな商業イベントも時々開かれますが、普段はありません。面白いのは、移動可能な椅子がたくさん並べられている。ベンチが設置されている公園はよくありますが、何人で行っても椅子を移動して自由に座れる。ポジショニングを自分たちで出来る。好きな場所に行って、そこが居場所になる。日本でやると、盗まれるんちゃうか、壊されるんちゃうかとなりますが、ここでは一切盗まれていない。ジャグリング教室、バードウォッチングなど、子どもから大人までいろいろなプログラムがある。趣味を持つ市民の専門家が教えますというのもあります。こういうことが日常的に行なわれていて、管理会社がまとめて毎週プログラムを出しています。
≪これからの都市空間の作り方≫
今までは、誰かが作ってくれたところを使うということでした。これからは、行政やディベロッパー(開発事業者)などの「作り手」が作ってきた時代から、「使い手」「使う側」がどのような街にしたいかと作っていく時代になってくる。むかし開発主義、お金主義といわれたように、お金がついていて作っていける時代じゃなくなってきたので、自分たちで逆に作れる機会が増えていると思います。具体的に身近なエリアや施設の運営主体、たとえばマンションの管理組合やマンションのオーナーさんの集まり。商業施設のデベロッパーもオーナーですね。商店街振興組合は店舗、商売のスポンサーの集まり。町内会は住民の集まり。まちづくり協議会はいろんな主体が集まっている。サークル団体は利用者やサポーターの集まりと考えると、それらが近くの空間に責任を持って管理していって、自分たちにも使いやすく、他の人にもオープンに使ってもらえるようなものになると、非常に面白くなってくるんじゃないかな。今は空いているところは、行政の施設だったら行政が管理し、商業施設の広場だったら企業が管理していることになっている。これからは「使い手が管理する」ということがありえるんじゃないかというのが先ほどご紹介した事例だと思います。
≪パブリックライフに適した公園≫
公共には「オフィシャル」「コモン」「オープン」の3つの意味があると言われています。公共空間も3つに分類できます。「オフィシャル」は行政が持っているもの。「コモン」は共有のもの、すべての人に関係する共有物。「オープン」は誰に対しても開かれているもの。
プライベート(私側)←→パブリック(官側)で分類すると、道路、公園、河川は行政が持っているものですが、路地、私道はプライベート。公開空地もオーナーやデベロッパーが持っていたり、どっちでもないところもあります。そういうプライベートとパブリック、スケールでいうと点~線~面になります。
真中に「広場」とあるのは、姫路の駅前などをイメージしています。道路でも公園でも河川でもないところでオープンな雰囲気があり、誰でも入れる。道路や河川はオープンですが、道路は車が通行できるようにしなければいけない。河川は自然そのものなので水を流さないといけない。これらは道路交通法や河川法、治水で縛りがあるんですが、公園は縛られていないという強みがあります。公園とか広場が都市の中で一番オープンな空間になっている。パブリックライフを実現できる一番適した、最もオープンな場所のひとつです。
≪揉め事を承知の上で公園を利用する≫
ただ、ボールはダメ、音楽をやりたい人はたくさんいるがうるさいからダメ。犬の散歩も嫌いな人がいる。バーベキューも火を使っちゃダメ。ホームレスも入ってきてほしくない。けどホームレスを支援したいNPOもいる。もっともオープンな空間であるがゆえに、それぞれ自分がしたいことができると思って来ると、他人に嫌がられるということが出てくる。だから公園管理者は大変です。公園管理者は身近な市民の利害調整で疲れてしまっているので、道路管理者や河川管理者よりも「余計なことはしないでくれ」となる。その気持ちはよく分かります。私も水都大阪パートナーズという立場で中之島公園を借りたり、中之島GATEの空間を借り受けたりしたときに揉め事がたくさんあって、全部こっちにかかってきます。音楽をやってほしいと思って音楽をやってもらうと、周辺のマンションから「おまえ訴えるぞ」と怒られるし、いろいろありました。
そういうことが絶対出てくることを承知の上で、あえて使っていくことをしてはどうだろうか。日常のこういう使い方が出来るんじゃないかと、いろんな使い方・利用シーンがある。それを妄想してみて、小さく主体と活動をイメージして提案する。私たちはこういう使い方をしたいが、これは最低限いろんな人に対しての迷惑をかけないことを考えて、もっと良い効果がありますよと管理者と作戦会議をする。そういうことをやってみて、世間の評価を得て、これは結構良いんじゃないかとなれば実際に使えてくる。
≪プレーヤーから調整者へ≫
もうひとつ大切なのは、自由と責任のプレーヤーになるだけではないこと。ここで終わると調整者は行政のままです。市民がプレーヤーから調整者に移っていけば、市民サイドで調整すればいいということになる。市民は行政には文句を言いやすいが、市民同士だと言い方も変わってきます。きちんと話す機会を持てば調整がよりやりやすくなり、可能性が増える。こういうことをやりたいというチャレンジやアイデアを実現できることが増えてくると、パブリックライフに近づくんじゃないかといつも思って生活しています。
どうやれば公共空間が面白くなるかについて話してきました。水都大阪や全国と海外の事例も見つつ、このあたりが最終的に出来てきたらいいんじゃないかと思います。ありがとうございました。
●pdf版もあります。こちらからダウンロードください。
●第2部:ワークショップ「考えよう!千里の公園のおもしろい使い方」は以下のリンク先にてご参照ください。
2016/03/10
2月20日(土)、豊中市千里文化センター(コラボ)にて、千里ニュータウンまちづくり市民フォーラム「考えよう!千里の公園のおもしろい使い方」を開催しました。参加者は約60名。後藤吹田市長、田中豊中市副市長にもご出席いただきました。第1部は…
●3月サロンで、大フォーラムをふり返りました。
2016/03/15
◎2016年3月13日(日)15時~16時(サロン) 16時~17時(運営委員会)◎南千里公民館会議室(千里ニュータウンプラザ7階)◎サロン&運営委員会 出席者数12名(うち行政2名)●3月サロン「動かそう!千里の公園のおもしろい使い方」2/20に開催した『第14回 千里ニュータウンまちづくり市民フォーラム』で出…
Posted by 千里市民フォーラム at 22:43│Comments(0)
│まちづくり市民フォーラム
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